研究概要 |
ジニアの受粉した種子が生育を途中で停止する現象(abortion)について本年度はその起こる時期と温度がabortionの誘起に影響するかどうかを検討した.起こる時期については受粉後0-25日の生育中の胚珠の長さを測定して生育の劣ったものと正常なものを比較推定した.その結果abortionは受粉後3日目を中心に起こっていることがわかった.さらに受粉後10,15,20,25日に採取した生育中の種子より生育が劣るもの,あるいは完全に停止しているものを選び出し,その組織を観察して生育を停止する時期を特定した.その結果種子として稔実していないものの中には胚珠としての完全な外見を持ちながら中に胚嚢が形成されていないものがみられた.また形態的には完全な胚嚢を持ちながら受粉しても卵細胞の分裂がみられないものがかなり多くみられた.これらが受精していないのかあるいは受精していながら細胞分裂を始めないのかを調べるため袋かけをして未受粉の状態で開花後10,15,20,25日に採取した胚珠の形態と比較した.その結果.未受粉の状態の胚珠では開花後25日に採取したものでも胚嚢内は開花直後と同様の状態が保たれていたが,開花後受粉して卵細胞の分裂を始めないものでは開花後(受粉後)20日では胚珠全体あるいは胚珠内部の委縮,,枯死がみられたものがあった.委縮のみられないものでもそのほとんどにおいて助細胞核がみられず未受粉のものとは異なった.すなはち受精はしていると考えられた.受精した卵細胞が分裂をして胚が成長していく過程でabortしているものについては正常のものにおいて受粉,受精後3日目まで,あるいは7-10日目にみられる胚の形態と同様のものが多くみられた.すなはちabortはこの段階で起こっていた.温度は15Cから30Cの範囲ではabortした種子の率に差はなくこの温度範囲ではabortionの誘起に影響を及ぼさなかった.
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