園芸作物の栽培では品質管理のため養水分の供給制御(吸収制限)が重要である。既存の栽培装置では、極めて不正確にしか管理できない(土耕)か、全く管理できない(水耕)かどちらかであった。筆者が発明した膜耕では理論的には正確にできるはずである。これまでの研究で、養水分の制御の内、水分のコントロールが可能であることが確認された。本年度は養分の吸収制御ができるかどうか実験を行ったが、植物の多量必須元素の内、NおよびKはこの膜では、通過抵抗が少なすぎ制御しにくいことがわかった。しかしP、Caでは比較的容易に制御できそうであった。これについては現在方法を改善、考慮中である。 膜耕で膜の分離機能でより有害成分を除去する場合、A1 100ppmを含む培養液では効果的にアルミニウムは除去し、植物は正常に生育できることが示された。現在はアルミニウム同様多価値イオンで存在する、CrやCdを用い、膜耕ではこれらを含む培養液で、植物が正常に生育できるかどうかを確認している。 また、定植時に、膜上に硫酸カルシウムを施すことにより、今まで膜耕では活着が不良で、生育させることが困難であった植物も、そろって生育させ得ることができるようになり、ほとんどの草本性園芸作物に膜耕は適用可能になった。 および耕膜の作物が低光量下で生存が延長されることの主要原因は、根圏にほとんど液体としての水が存在しないことによって根の活性が低下しないことか主要原因であることが確認された。またこの時膜耕のヒメコリウスでは、葉内クロロフィル量、アントシアニン含量が維持されるが、水耕では低光量条件にした後これらが維持しきれずに枯死することが判明した。
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