カキ果実において、果実中へ転流されてきたショ糖がアポプラスト中で酸性インベルターゼにより還元糖へ分解されることが果実発育・糖蓄積のための重要な要因となっている。本年度は、カキ果実のアポプラスト中における糖およびpHの挙動を再調査するとともに、糖代謝を制御する酸性インベルターゼの特性を調査し、アポプラストでの糖代謝と果実細胞への糖蓄積機構および果実肥大との関係を解明するために以下の実験を行った。 1.ショ糖蓄積型である‘油壺'と還元糖蓄積型である‘盆柿'を用い、経時的に果実全体とアポプラスト液の糖組成を調査した。その結果、糖含量は果実全体でもアポプラスト液でも、果実生長第3期の開始とともに急激に増加した。ただ、果実全体の糖組成はそれぞれの品種の糖蓄積タイプに対応する差異が明らかであるのに対して、アポプラスト液ではいずれの品種においてもショ糖はほとんど存在せず、還元糖である果糖とブドウ糖によって占められて、昨年の‘富有'果実の結果と一致した。 2.ヘタ片除去処理により第3期の果実肥大を抑制した‘油壺'果実のアポプラスト液の糖組成を調査したところ、対照区の果実では生長第3期とともに還元糖含量が急激に増加したが、処理果ではショ糖だけでなく、還元糖の増加も顕著に抑えられた。また、ヘタ片除去果実ではアポプラストに存在する酸性インベルターゼ活性が顕著に抑制され、果実肥大に対するアポプラストでの糖代謝の重要性が明らかとなった。 3.アポプラスト液のpHの変化を経時的に測定したところ、その値は6.5前後を示し、アポプラストに存在する酸性インベルターゼ活性の最適pHとは一致していなかった。このことは、アポプラストでの酸性インベルターゼ活性制御に対して、そのpHは大きな要因ではないとも考えられるが、アポプラストでのpH分布が一様でない可能性も考えられ、今後の検討課題を残した。
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