研究概要 |
大根島(島根県)で育種・選抜されたボタン20品種の促成能力について検討した.開花率は予備冷蔵によって向上する品種群(‘百花殿',‘紅輝獅子'は12℃で,‘八束獅子',‘島の藤'および‘島大臣'は15℃,‘島娘'は12℃と15℃のいずれも有効),低下する品種群('千代桜'),並びにあまり影響を受けない品種群(‘島の輝')に分類された. ボタン38品種の花色と色素構成を調査した。色相(ハンター座標,a,b値)は,白色系と二,三の桃色系品種を除いて赤,赤紫および紫の範囲にあり,明度と彩度(ハンター座標,L,C値)の関係では,赤色系品種はくすんだ色から濃い(暗い)色の,桃色系品種はごく淡い色からくすんだ色の,また紫色系品種は,1品種を除いて濃い色から暗い色の範囲にあり,きわめて鮮やかな色の品種は見出せなかった。 色素組成は,赤色系品種はペラルゴニジン系を主体とし,桃色系品種はペラルゴニジン3,5-ジグルコシドかペオニジン3,5-ジグルコシドを主体とした。また紫色系品種はペオニジン3,5-ジグルコシドを主体とするが,濃紫色の品種に多量のシアニジン系が混在する特徴を示した。 花色と色素組成との間には,青みが増すにつれてペラルゴニジン系は減少し,逆にペオニジン系が増加する傾向が認められ,アントシアンの水酸化とメチル化は,配糖体化やコピグメント効果よりもボタン花色の青色化に寄与していると推察された。 将来の花色育種に関して,ペラルゴニジン3-グルコシド含有量の高い‘芳紀',‘新島の輝',‘紅輝獅子'が鮮紅色の育種親として,また,ペオニジン3,5-ジグルコシド含有量の高い‘豊麗'が青色品種の育種親としてそれぞれ有望である。
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