研究概要 |
本研究は、カンキツの核型分析が可能な染色体観察技術を確立して、カリオグラムを作成し、核型分析を試みるために行った。 1,前年明らかにした染色体標本作製手法を用い、‘土佐文旦'、‘水晶文旦'、‘ワシントンネ-ブル'オレンジ、‘興津早生'ウンシュウミカン、ニンポウキンカンの染色体を観察した。‘土佐文旦'と‘水晶文旦'では2n=20か21と算定できる核板が最も多く、ワシントンネ-ブルでは2n=18か19と算定できる核板が最も多かった。‘興津早生'では2n=19、ニンポウキンカンでは2n=20と算定できる核板が最も多かった。 2,カリオグラムを作成したところ、‘土佐文旦,と‘水晶文旦'では2〜3対の長い染色体と2〜3対の短い染色体が観察された。ワシントンネ-ブルでは2対の長い染色体が認められた。‘興津早生'とキンカンは1〜2対の長い染色体が観察された。このように、それぞれの染色体を個々に区別することは困難であった。 3,染色体を区別するために有効な分染法を明らかとするために、トリプシンギムザ法と植物染色体用Gバンド法についてトリプシン処理時間とNaHCO_3処理時間の検討を行った。また、Cバンド法について塩酸処理時間、飽和水酸化バリウム処理時間、2倍のSSC処理時間について検討した。しかし、いずれも分染の再現性が低いため、今後詳細に検討する必要がある。 4,CMA/DAPI蛍光染色法を検討したところ、安定して明確なバンドが検出された。‘土佐文旦'の2n=21と算定される核板を用いて調査した結果、CMAで強く染され、DAPIで染色されないバンド(CMA+/DAPI-)が染色体の両端にあるもの、一方の端部のみにあるもの、バンドが生じないものの3グループに染色体を分けることができ、染色体を区別する有効な指標と考えられた。しかし、両端にバンドのある染色体は3〜5本、一方の端部にバンドのある染色体は6〜8本と核板により一定しておらず、今後、さらに検討する必要がある。
|