研究概要 |
常緑性黄色花ツツジの作出を目的として,これまで,黄色花をもつキレンゲツツジとさまざまな常緑性ツツジ類との交配が試みられてきたが,得られた雑種はほとんどがアルビノであり開花までに至っていない.キレンゲツツジ花弁の黄色はカロチノイド系色素によって発現していることが知られているが,キレンゲツツジと常緑性ツツジ類とを交配した場合のカロチノイド系色素の後代への遺伝性については雑種獲得の困難さに起因してこれまで明らかにされていなかった.これまでに申請者らは常緑性ツツジ種間のF_1とキレンゲツツジとの雑種個体を得ることに成功し,その雑種個体の花粉稔性はほとんどなかったものの,花弁にはカロチノイド系色素が含まれることを見いだした. そこで,本年度は九州大学農学部園芸学教室で育成中のさまざまな常緑性野生ツツジ類(ヤマツツジ,ミヤマキリシマ,フジツツジ,マルバサツキ,キシツツジ)ならびにそれらのF_1とキレンゲツツジとの単交配および三系交配を行い,着果率,さく果内の胚珠数,胚珠稔性,緑色個体の発生頻度および得られた実生の雑種性を調べた.その結果,単交配では実生をほとんど得ることができなかったが,常緑性ツツジ類のF_1を種子親にすると比較的多くの雑種実生を獲得できた.これらの雑種実生は常緑性と落葉性という遠縁交雑により得られたものであり不稔である可能性が高い.一般に,稔性回復には複二倍体化が有効とされているため,つぎに,in vitroでのコルヒチン処理による倍加処理を試みた.その結果,2ip添加のAnderson′s Rhododendron培地で外植体(茎頂部)から多芽体を誘導し,つぎに,得られた多芽体にコルヒチン処理(0.01%,24時間処理)を行うことで効率的に倍加個体を得る培養系を確立できた.
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