カンキツ類及びニホンナシにおいては生食用果実の品質を高めるために多量の幼効果が摘果され、廃棄されている。本研究ではこれらの摘果幼果のバイオマスとしての有効利用を目的として、前年度は幼果よりの分析用酵素剤の酵素の製造を行い、そのアスコルビン酸(AsA)分析用の試薬としての適性を検討した。その結果、AsA分析試薬としては、アセトンパウダーの抽出液で十分使用可能であり、これまで使用してきたキュウリ酵素と同程度の分析精度を示すことを明らかにした。更に、ミカン酵素はキュウリ酵素よりの酸性側でのpH作用域が広いことから、食品分析における対象食品の範囲が広がることを明らかにした。これに引き続き本年度はニホンナシ摘果幼果に含まれる機能性物質について追求した。その結果、摘果幼果の抽出液は油脂(リノール酸)の酸化に対して、これまで使用されているBHT等の合成酸化防止剤と同等の抗酸化活性を示すことを認めた。この抽出液にはクロロゲン酸やカテキン等のポリフェノール(PP)類が多量に含まれ、これらPPもリノール酸の酸化を阻害することから、幼果の抗酸化物質の本体は一種のPPであろうと考えられた。同様の抗酸化物質はウンシュウミカン幼果にも存在することを認めたが、その抗酸化活性はナシ抽出液よりも低かった。さらに、ナシ抽出液は約2カ月という長期にわたって、リノール酸の酸化をほぼ完全に阻害した。したがって、この物質は天然物起源の油糧食品用の抗酸化剤の素材としてきわめて有望であり、今後はその実用化に向けて研究を行う予定である。
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