研究概要 |
多年生花卉であるフリージアおよびダッチアイリスを実験材料として,開花に対する低温感応性を調べることでその茎頂が幼若期から花熟状態へと移行する時期を明らかにするとともに,そん際の球重,分化葉数および茎頂直径の変化を調べ,これらの形態的特徴が幼若性の指標とならないかどうかを検討した. その結果,フリージアでは,茎頂直径が0.19〜0.20mmを境として,その茎軸が幼若期から花熟状態へ移行して低温感応が可能となることを示す有効な指標となることが明らかになった.また,フリージアの球茎上では,上位節の芽ほど茎頂直径が大きく,花熟状態への移行時期は茎軸によって異なっていることが明らかとなり,従来個体レベルで考えられていた幼若性の概念は,茎軸レベルで考えるべきであることが示された. 一方,ダッチアイリスについては,幼若期にある茎頂と花熟状態にある茎頂の形態的差異は観察されず,茎頂直径についても葉分化にともなって増減を繰り返した.また,幼若期にある夏を経過する前のりん茎あるいは9〜10gの小球に対して,50〜100ppmのエチレンを数時間処理するだけで,その直後より花熟状態が成立して低温感応するようになることが示されたが,この場合にも茎頂直径の変化を含めエチレン処理による即時的な形態的変化は観察されず.幼若期から花熟状態への移行は極めて生理的な変化であることが示唆された.なお,この点に関しては現在遺伝子発現の視点から幼若性を検討中である.
|