研究概要 |
本研究は、河川の高水敷を対象に、主に陸棲昆虫類の生息状況を把握するとともに高水敷の環境状態との関連性について言及を試み、高水敷の整備に際しての昆虫類の生息からみた基礎的データの把握、さらには、昆虫類の生息に適した河川環境の創出手法、特に、高水敷を中心とした土地利用のあり方、自然の保全手法等について検討することを主な目的としている。そこで、調査・研究対象地としては、大都市近郊にあって、様々な利用が図られていることにより、流域によって高水敷の環境条件が異なり、昆虫類の生息との関係が把握しやすいものと考えられる多摩川を選定した。 平成8年度においては、多摩川の環境構成に係わる文献・資料の収集を行う一方で、これらの文献・資料および現地踏査に基づき高水敷の植生状況、利用状況、管理状況等の把握を行った。つぎに、以上の調査結果をもとに昆虫生息調査を実施した。調査については、上流から下流にかけて、植生、利用、管理状況等から、環境条件が異なる代表的な25地点を選定し、ベイトトラップ法による腐肉食性昆虫の生息調査を6月〜10にかけて合計9回実施した。捕獲した昆虫類は、同定・分類した結果、全体で2目9科33種2,058個体の昆虫類の生息が把握された。このうち、特に捕獲数をみると、鞘翅目シデムシ科の昆虫が全体の約70%を占めた。また、種類別ではシデムシ科のコクロシデムシが全体の約28%を占め、全トラップの約70%において捕獲された。一方、エンマムシ科等の昆虫類やシデムシ科のクロシデムシ等の捕獲数は少なく、市街化の進行した都市内では殆ど生息しない種類も存在した。また、平成9・10年度の継続調査・研究に向けて、トラップ別、流域別等による捕獲昆虫を分析し、各環境条件との関係から、腐肉食性昆虫類の生息からみた高水敷の環境形成等についての検討を行った。
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