本研究は、鉄化合物水溶液前処理によりトマトに青枯病に対して、抵抗性の誘導が起こる可能性を探る目的で、平成8年度は、市販の3種の鉄化合物水溶液の浸漬処理による本病発病抑制作用の再確認と、鉄処理が接種後のトマト茎内への細菌の感染、増殖に及ぼす影響を経日的に検討すること、加えて鉄処理トマト茎内での抵抗性関連酵素の発現様相について検討した。トマト品種“桃太郎"を園芸用培土(クレエ-ス)をつめたポットで5〜6本葉期まで育苗し、根を水洗いして用いた。鉄化合物は塩化鉄、硫酸鉄アンモニュウム、硫酸第一アンモニュウムであり、いすれも脱塩水で250ppmに溶解して48時間浸根処理した。処理終了後、あらかじめ培養しておいたスレトプトマイシン耐性青枯細菌の懸濁液に浸根接種し、ただちにポットに移植した。接種後、トマトは温室で育て、毎日を観察して発病を調べた。同時に茎内部の本病細菌の感染、増殖を検討するために、接種後経日ごとに、トマト苗の子葉の付着部から丈夫の茎組織を1gサンプリングして、表面殺菌後、滅菌水10mlと磨砕して、その上澄液100mlをとり、ストレプトマイシン添加TCA培地に塗沫して30℃で培養した。この結果、いずれの鉄化合物を処理したトマトでも発病開始日が水処理の対照区に比べて3〜5日遅れ、特に硫酸鉄アンモニュウム処理トマトで明確であった。また、トマト茎内での細菌の動向は、水処理区と、塩化鉄処理を除いた2化合物処理区トマトでは接種2日目に茎内に接種菌が検出されたが、3〜4日目に一時的に検出できなくなった。その後、本細菌が再び検出されるようになったが、その検出量は水処理トマトに比べて鉄処理区で低下する傾向が見られた。抵抗性関連酵素活性についてはPOに関してのみ検討したが、塩化鉄以外の鉄処理トマトは対照区のそれに比較して高くなる傾向が見られた。
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