イネより単離したクラスIキチナーゼのcDNA(RCC2)を導入したトランスジェニックキュウリ(品種:霜不知)における灰色かび病に対する抵抗性の増強を検討した。その結果、供試した当代株の約60%で抵抗性の増強が認められ、特に、CR32株で高い抵抗性の増強がみられた。これらの株では、PCR-サザン法によって、導入したRCC2の存在が確認され、ELISA検定からイネ・キチナーゼ産生量と抵抗性の増強に正の相関が認められた。また、これらの株におけるBotrytis cinerea胞子の感染行動を観察したところ、侵入前段階では抑制はみられず、侵入後の細胞内侵入菌糸の生育が著しく抑制された。さらに、TLC検定から低分子の抗菌性物質は検出されなかった。これらのことから、本病抵抗性の増強は主にキチナーゼの直接的な溶菌作用によることが示唆された。 次に、強抵抗性株のCR32株の自殖後代68株について抵抗性検定を行ったところ、当代株に比べて抵抗性の低下がみられたものの、約74%の株で灰色かび病に対する抵抗性の増強が認められた。これらの株では、RCC2の存在、その発現が確認され、RCC2導入による灰色かび病抵抗性の遺伝が確かめられた。また、強抵抗性後代株について、ρ-ニトロフェニル法によるキチナーゼ活性、B.cinerea胞子の感染行動及びTLC検定によるファイトアレキシンの検出を行った結果、これらの後代株の抵抗性は、当代株と同様にキチナーゼの直接的効果によることが示唆された。
|