研究は、ガラス室内における予備的な試験を終え、平成8年11月から、圃場における実証的な試験の段階に入っている。区画の規模は30m×300mであり、恐らくわが国では最大規模と思われる。 試験区は慣行区(ビールムギ〜収穫〜ロータリー耕耘〜ダイズ播種〜除草剤散布)と少耕起区(ビールムギ〜収穫〜麦稈のマルチ化〜ダイズ播種、ライムギ〜マルチ化〜ダイズ播種)から構成され、平成9年5月に、除草剤あるいはロータリーモアによるムギ類のマルチ化を行った後にダイズを播種する予定である。 経営規模が1ヘクタール未満の農家が大部分を占めるわが国の農業では、アメリカのようなスケールメリットは望めず、少耕起栽培においても、わが国の農業形態に合致したシステムを確立することが重要である。本研究は、中間段階にあるが、ダイズ栽培を例とした少耕起栽培のメリットとデメリットも明らかになりつつある。即ち、メリットとしては、ロータリー耕の省略による省力化、inter crop(ムギ)の導入によるダイズ連作障害の回避などが考えられる。しかしながら、ムギ類をマルチ化するための大型のモアおよび除草剤散布機、さらには植物マルチの上からダイズを播種する不耕起播種機がないことなど、農業機械の不備が植物マルチを利用した少耕起栽培を遂行する上での最大の障害であることも明らかになった。 ムギ類のバイオマスと雑草植生は平成8年11月から、一カ月毎に調査しており、雑草植生はダイズ播種後も引き続き行う予定である。さらに、4月以降は、植物マルチを利用した少耕起栽培のダイズ生産に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、ダイズの成長(地上部、地下部)と地温、土壌水分などの土壌環境を合わせて調査する予定である。
|