95%致死濃度の2倍量核多角体病ウイルス(NPV)と顆粒病ウイルス(GV)あるいは昆虫ポックスウイルス(EPV)を4齢脱皮直後のチャノコカクモンハマキ幼虫に同時接種し、その後の宿主体内でのNPVの増殖を調査したところ、NPVの増殖パターンは、NPV単独接種の場合とほぼ同じであった。NPVの次世代の包埋体は、ウイルス接種後5日目から宿主体内で認められ、その後急激に増加して、9日目にプラトーに達した。NPV増殖パターンは、ロジスチックモデルへよく適合することが明らかになった。NPV単独接種区、NPVとGV同時接種区およびNPVとEPV同時接種区におけるNPVの内的自然増加率は、それぞれ2.8、3.1および2.4であった。また、飽和密度(包埋体数の対数値)は、それぞれ9.4、9.5および9.3であった。 一方、95%致死濃度の2倍量のEPVを4齢脱皮直後のチャノコカクモンハマキ幼虫に接種し、その後の宿主体内でのEPVの増殖を調査したところ、EPV増殖パターンは、ロジスチックモデルへよく適合し、内的自然増加率および飽和密度はそれぞれ0.24および8.3と推定された。しかし、NPVとEPVを同時に接種した場合には、EPVはほとんど増殖できなかった。このことから、ウイルス間の競争の勝敗には、ウイルスの増殖速度が関係していることが示唆され、内的自然増加率の大きいウイルスが優位であると考えられた。
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