アワヨトウ4齢幼虫の核多角体病ウイルス(NPV)と昆虫ポックスウイルス(EPV)に対する病原性を小滴飲下法により調査した結果、95%致死濃度はそれぞれのウイルスで2×10^6および10^5包埋体/1頭と、NPVと比べてEPVの方が病原力が強かった。 95%致死濃度の5倍量のNPVをアワヨトウ4齢幼虫に径口投与し、その後の宿主体内でのウイルスの増殖を調査した結果、ウイルス投与2日後から次世代のウイルスの産生が認められ、その後ウイルス産生量は急激に増加し、ウイルス投与7日後にプラトーに達した。1個体当たり産生された包埋体数は、最大で10^9であった。これに対して、95%致死濃度の5倍量のEPVをアワヨトウ4齢幼虫に径口投与し、その後の宿主体内でのウイルスの増殖を調査したところ、ウイルス投与6日後から次世代のウイルスの産生が認められ、その後、ウイルス産生量はゆっくりと増加し、ウイルス投与14日後にプラトー(10^9)に達した。NPVとEPVを4齢幼虫に同時に接種したところ、EPVの包埋体は全く産生されず、NPVの包埋体だけが産生された。産生されたNPVの包埋体数は、NPV単独接種の場合とほぼ同じであった。このことから、ウイルス間の競争の勝敗には、ウイルスの増殖速度が関係していることが示唆され、増殖の早いウイルスが優位であると考えられた。
|