植物は病原菌の感染に対し自己防衛のため、一連の生体防御タンパク質を誘導発現するが、その主な溶菌酵素にキチナーゼがある。本研究では、近年問題の多い買う農薬散布に替わって、植物本来の生体防御酵素キナーゼを病原菌感受性植物に遺伝子導入し、病原菌抵抗性植物の作出を可能にするために必要な研究を行ってきた。その成果を以下に述べる。 1:キチナーゼはファミリー18と19の2つのglycosylhydrolaseに分類され、また植物キチナーゼは5つのクラスに分類される。我々は、ヤマイモの塊茎と蚕の外皮からキチナーゼのアイソザイムを精製し性質を調べた。その結果、病原菌に対する溶菌活性が強いキチナーゼはクラスIIIとIV、そしてファミリー18であることを明らかにした。また、これらのキチナーゼの溶菌活性の強さは固形のキチンに対する親和力に起因することを見い出した。 2:ヤマイモのクラスIVのキチナーゼの遺伝子配列およびアミノ酸配列を解明し、さらに、その遺伝子導入のため、タバコキチナーゼ(クラスI)あるいはシュガ-ビ-トキチナーゼ(クラスIV)の分泌シグナルを融合したキチナーゼ遺伝子を構築した。この遺伝子をアグロバクテリウムのバイナリー系を用いて導入し、ヤマイモキチナーゼを発現するタバコおよびイチゴの形質転換植物の作出に成功した。 3:本研究により明かになった問題点として、キチナーゼ遺伝子の遺伝子導入のために用いる大腸菌およびアグロバクテリウムが、キチナーゼ遺伝子の導入により生育が悪くなることが判明した。現在、これを解決するため2つの方法を用いて対処している。1つはパーティクルガンによる導入法を用いること。2つめは遺伝子構築において工夫している。
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