本研究の目的は施設作物を加害するアブラムシ類の生物的防除素材として、日本に在来のツヤコバチ科の2種捕食寄生バチ:Aphelinus gossypiiとAphelinus sp.nr.varipesの利用を検討することである。両種ともに京都産個体群を供試し、次の結果を得た。 1.発育と増殖:15L-9D(長日)一定温度条件で、ワタアブラムシを寄主として調べた。 (1)発育:A.gossypiiとA.sp.nr.varipesの産卵から羽化までの平均発育期間は、それぞれ15℃:♀45.5日/♂43.9日と♀37.8日/♂36.0日、18℃:21.9日/21.3日と25.3日/24.4日、25℃:12.3日/12.3日と12.6日/12.6日、30℃:10.1日/10.3日と10.7日/10.4日であった。10℃でA.gossypiiは♀77.6日/♂75.1日を要して成育したが、A.sp.nr.varipesは成育できなかった。 (2)増殖:毎日40匹の寄主を供試したとき、18℃と25℃におけるA.gossypiiの平均寿命はそれぞれ23.3日と18.4日、平均総産卵数は207個と373個、25℃におけるA.sp.nr.varipesの平均寿命は13.7日、平均総産卵数は47.8個であった。 2.保存法:A.sp.nr.varipesについて、順化の効果と好適発育段階を検討した。 (1)休眠虫:10L-14D(短日)18℃で飼育し、マミ-化後短日5℃で保存、4週間後長日18℃に移した場合の生存率は、1週間ずつ二段階の順化処理を保存前後に行った区で最も高く(86.4%)、保存前のみ、後のみに順化した区(それぞれ62.5%、46.9%)、順化しなかった区(38.9%)の順に低くなった。 (2)非休眠虫:長日18℃で飼育し、マミ-化後1日目、5日目または10日目(それぞれ幼虫、蛹、羽化直前蛹)に長日5℃に移し、4週間、8週間または10週間保存後長日18℃に戻し生存率を調べた。生存率は蛹期に保存した場合に最も高く、4週間80.1%、8週間65.4%であった。
|