研究概要 |
植物キチナーゼの構造と機能との相関を明らかにする目的で,昨年度ダイズおよび二条オオムギからキチナーゼを分離精製した.これらのキチナーゼはアミノ酸組成分析の結果それぞれクラスIIIおよぴクラスIIキチナーゼであると推定された.そこで,両キチナーゼの構造を明らかにする目的でタンパク質側からの構造解析を試みた.ダイズキチナーゼは還元カルボキシメチル化後,トリプシン,V8プロテアーゼおよびキモトリプシンで断片化し,逆相高速液体クロマトグラフィーによりペプチドの分離を行った.得られたペプチドはアミノ酸組成および配列分析を行い,クラスIIIキチナーゼであるへバミンと比較した.その結果,ヘバミンの総残基数の96%にあたる263残基のアミノ酸を決定した.配列の比較から本キチナーゼはへバミンと類似の立体構造を有していると推定され,触媒残基も保存されていた.一方,二条オオムギキチナーゼは同様にトリプシンで分解し,同様にペプチドのアミノ酸配列を決定した.その結果,Leahらが報告したオオムギクラスIIキチナーゼの150番目のGlyがAlaに置換していることが明らかとなった.さらに,本年度は六条ハダカムギからキチナーゼの精製を試みた.その結果,35kDaのキチナーゼを精製することができた.本キチナーゼは分子量からクラスIキチナーゼと推定された.また,すでに構造解析を行ったヤマノイモクラスIII及びクラスIVキチナーゼについて,酵素学的性質を調べた.その結果,両者の至適pHは基質によって異なり,高分子基質(グライコールキチン)に対してはpH3.5および8.5の二カ所,低分子基質(Nアセチルグルコサミンオリゴマー)に対してはクラスIIIがpH3,クラスIVがpH5に至適pHを有することが分かった.至適温度はいずれも60℃付近,温度安定性はクラスIIIが80℃以下,クラスIVが60℃以下であった.今後各クラスのキチナーゼの諸性質を比較検討する予定である.
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