根へのAl結合時のレスポンスとその後の伸長時のレスポンスを区別する事は、Al耐性機構の解析にとって重要である。以下に得られた結果を列挙する。高濃度Al処理時の根端Al含有率はAl耐性と負の相関があったが、根端や根端細胞壁のCECとは無関係であった。また、Al処理後においても根端細胞壁CEC値はほとんど変化せず、また、Al耐性とは無関係であった。さらに、弱い種ほど、根端K・PあるいはMgがAl処理によって著しく低下した。次に、イネ、トウモロコシ、エンドウ、コムギ、ソルゴ-の夫々数十品種から選抜した各強弱品種においても、これらの関係は同じであった。20μM Al、1時間処理(根端2mm)で、強いイネではK、Clが高く、弱いオオムギでは逆に低くなった(EPMA分析)。培地へのK流出量もこれに対応していた。次に、1時間Al処理(100μM)した直後のFDA-PI染色では原形質膜(PM)透過性は正常であるが、その後Al非含有培地で数時間再伸長させると、弱い植物ではPM破壊がより著しく、また、Al前処理後クエン酸短時間処理すると正常になった。根端から得たプロトプラストで再伸長の代わりに低張液を用いると、根と同じ結果が得られた。さらに、プロトプラストとそのゴ-ストとのAl含有率比は弱い植物程lに近かった。根から放出される有機酸、特にクエン酸の量や培地濃度の違いは、Al耐性種・品種間差に対応していなかった。以上の結果は、弱い植物ほど短時間で根端PMが多量Alで飽和され、透過性が増大し、Kの漏出やAlの侵入が起こり、根の伸長に伴ってこれらが激化すると整理される。根端細胞の原形質膜の脂質組成がAl耐性の主要点であろうと予想された。
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