研究概要 |
本研究の目的は,非アロフェン質の火山灰土壌を用いて,従来の土壌の鉱物を中心としたアルミニウムの化学を,鉱物と有機物の混合系の土壌に展開しようとするものである.行った実験は,(1)典型的な非アロフェン質アンディソル,および対照のアロフェン質アンディソル腐植層の土壌固相の活性Al(KCl,塩化銅,ピロリン酸塩,酸性シュウ酸塩抽出のAl)の定量,および(2)土壌の無処理試料と前述の方法でAlを除去した試料について,酸性緩衝溶液または塩類溶液で放出される単量体Alの経時的な測定である. これまでに得られた結果は,(1)非アロフェン質アンディソルA層では酸性溶液によって多量のAlが放出されること,(2)放出されたALの大部分は腐植複合体を形成するAlであること,(3)Alの放出は溶液のpHとイオン強度に大きく依存することに要約された.このことから,Al-腐植複合体に富む非アロフェン質アンディソルA層のアルミニウムのダイナミックスには,鉱物の溶解沈殿反応だけではなく,腐植の陰荷電上でのHイオンとAlイオンの交換反応が大きく影響することが示唆された.今後,土壌と溶液との平衡実験において土壌Alの溶解性から,このことを確認する予定である. また,非アロフェン質のAl-腐植複合体に富む土壌の一部では,1MのKCl溶液による抽出法で交換性Alを厳密に評価できない可能性があることが明らかになった.この1M-KCl抽出法は交換性Alを評価する方法として世界的に用いられている方法である.この問題についても来年度以降に検討する.
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