研究概要 |
イネ(ササニシキ)培養細胞に特異的に発現している低温性αアミラーゼの性質支配領域を決定する目的で、H8年度は常温性αアミラーゼ(アミラーゼI)と低温性αアミラーゼ(アミラーゼIII)の非相同領域を組換えたキメラ遺伝子を作成し、酵母(Sac charomyces cerevisiae)で発現をおこなった。アミラーゼIの性質を示すタンパク質は酵母より分泌されたがアミラーゼIIIの性質を示すタンパク質は分泌されず、性質の決定が困難と思われたため、H9年度は大腸菌での発現系を構築し、両酵素及びアミラーゼI・IIIを組換えた8種のキメラ遺伝子をつくり、タンパク質の発現と生産をおこなうことに成功した。それぞれのキメラたんぱく質の性質の解析から、4個所の非相同領域(a,b,c,d)のうち、第3番目のc領域がアミラーゼの低温性を支配していることを明らかにした。 この非相同領域は常温性のアミラーゼIでは、α-ヘリックスをとっているのに対し、低温性のアミラーゼIIIではβ-シート構造をとっていることが、Chou-Fasmanの2次構造予測からも示された。この領域はアミラーゼの二つの活性中心残基ASp176,Glu201にはさまれた領域で活性中心の近傍に位置しており、アミラーゼIIIの触媒機構に影響をおよぼすものと考えられる。またこの領域内にあるアミノ酸のうち、Pro180は常温性のアミラーゼIとは異なるアミノ酸で、イミノペプチド結合を形成するイミノ酸であることから、立体構造にひずみをあたえ、酵素の性質を変化させた可能性が考えられる。
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