研究概要 |
黄色ブドウ球菌の白血球崩壊毒素ロイコシジンおよび赤血球崩壊毒素ガンマヘモリジンは、それぞれ二成分蛋白質(LukFとLukS)及び(HγIとHγII)から構成され、それぞれの毒素活性発現には各々二成分が必須である。LukF成分とHγI成分は両毒素において共通成分として存在し、またLukS及びHγII成分は、血球認識に携わる蛋白質であることを明らかにした。LukS/HγIIキメラ成分の解析から、ガンマヘモリジン活性には、HγII成分のN末端からArg57までの領域(MHLS 5)が必須であることが判明した。そこで、この領域における両成分の相違アミノ酸配列/残基をLukS成分に導入し特異的最小必須領域の同定を行った。HγII成分のN末端からArg57までの57アミノ酸必須領域とLukS成分におけるN末端相同領域との比較から、HγII成分のIle27〜Asp35の領域に存在するα-ヘリックス構造に注目した。そして、IV領域はこのα-ヘリックス領域のすぐ上流域に存在しているので、MLS-IVの二次構造を推定したところ、Asp18〜Thr20間のα-ヘリックス構造は形成されたが、Ile27〜Asp35間のα-ヘリックス構造は形成されなかった。しかしながら、Ala26-Ile27を加えたIV'領域を導入したMLS-IV'ではHγII成分に見られる2つのα-ヘリックス構造が再現された。そこで、MLS-IV'を解析した。MLS-IV'の精製標品を用いて、解析を行った結果、ガンマヘモリジン活性はHγII成分を100とした相対溶血活性でMHLS5、MLS-IV'それぞれ,205、102であった。これらの結果より、HγII成分のIV'領域(K23RLAI27)が、ガンマヘモリジン活性に必須であることが判明した。またAsp18〜Thr20間及びIle27〜Asp35間の2つのα-ヘリックス領域が、ガンマヘモリジン活性に重要であること示唆された。
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