研究概要 |
当研究室では、クメンを分解する細菌を取得し、クメン代謝系酵素遺伝子(cum遺伝子)の解析を行ってきた。その結果、単離されたPseudomonas fluorescens IP01株のcum遺伝子のうち、芳香環の初発酸化、脱水素、メタ開裂に関与するcumA1A2A3A4BC遺伝子と機能未知のORF3の存在が明らかになった。 本研究においては、メタ開裂以降のクメン代謝系酵素遺伝子を明らかにし、cum遺伝子群の全容を解明することを目的とした。現在までに報告されている芳香族化合物の代謝系酵素遺伝子は、ほとんどの菌においてクラスターを形成しているため、このcumABC遺伝子の下流域にも何らかのクメン代謝に関与する遺伝子が存在している可能性が考えられた。そこで、メタ開裂酵素をコードするcum遺伝子の下流域を含む遺伝子断片の取得を試みた。IP01株の遺伝子ライブラリーを作成し、cum遺伝子産物のメタ開裂活性を利用したスクリーニングを行った結果、約5.8kbのSal1断片を含むプラスミド(plP116)の取得に成功した。cum遺伝子の下流域約4kbについて塩基配列を決定し、コンピューター解析を行ったところ、この領域に3つのORFの存在が確認された。これらORFは、既知の芳香族化合物代謝系酵素遺伝子において2-hydroxypenta-2,4-dienoic acid(HPD)からacetyl-CoAへの代謝に関与する酵素遺伝子群と高い相同生を示し、特にビフェニル/PCB資化菌LB400株のbphH,bphJ,bphIとはアミノ酸レベルで約80%の高い相同生を示した。以上の結果より、各ORFの遺伝子産物の酵素活性はまだ測定していないものの、それぞれHPD hydratase,acetaldehyde dehydrogenase,4-hydroxy-2-oxovalerate aldolaseをコードする酵素遺伝子である可能性が強く示され、順にcumE、cumG、cumFと命名した。
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