研究概要 |
1. TVAI変異酵素の解析。アミラーゼ類に見られる保存領域の一つBは活性中心のAsp残基を含み、そのC末端側はサブサイト5(プロテアーゼにおける呼称を準用すればP1に相当する)に近接する。TVAIのこの部分にはTVAIIにない11残基の挿入と3残基の変異が見られる。この違いが両者の糖転移活性の違いの原因である可能性を、TVAIの11残基の欠失変異酵素DEL363-373、3残基をTVAII型に変異させたA357V/Q359N/Y360E変異酵素、および両方の変異を導入したDELI363-373II変異酵素を調製し、検討した。その結果、11残基の挿入は酵素活性に重要ではなく、3残基の変異によりα1-4結合分解活性は大きく低下するが、α1-6結合分解活性は変化しないことがわかった。しかし、糖転移反応には大きな変化は見られなかった。2. TVAII変異酵素の解析。TVAIIのアミノ酸配列中202番目以降にはHKYDTというプルラン分解性アミラーゼで保存されている配列があり、サブサイト3 (S2に相当する)の近傍にあると推定される。しかし、TVAIIでは201番目もHisのため、H201N, N202NおよびH201N/H202N二重変異酵素を調製し、その性質を検討した結果、(1) H201残基はプルラン認識に関係している。H202残基は酵素の機能に重要であり変異により酵素活性が大きく低下する。ところがH201N/H202N二重変異酵素では活性が回復した。その理由は検討中である。(2)プルランを基質にしグルコースの糖転移反応を調べたところ、H201N変異酵素ではパノースにグルコースがα1-4付加したIMMの生成量は大きく低下したが、α1-6付加したIMIMの生成量は変化しなかった。このことはHis201が溶媒と接するクレフト中にあり、変異により入ってくる糖のオリエンテーションが変化したことを強く示唆している。しかし、(3)グルコース以外の糖ではいずれの変異株でも転移反応は観察されず、糖に対する特異性を変えることはできなかった。
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