研究概要 |
出芽酵母では、人間の神経系遺伝子と塩基配列において相同性がある液胞の遺伝子(VAM3)が既にみつかっており、更に、この遺伝子の他に液胞遺伝子として(VAM2,VAM6)も取得した。これらの遺伝子の機能を知るために、遺伝子の欠損変異株(Δvam2,Δvam3,Δvam6)を作成し、それらの形態観察を行った。その結果、これらすべての変異株において、細胞の中央にあるcentral vacuoleが消えて、細い分化した液胞が多数観察された。これら多数の液胞は含有物が異なるめと考えられる、電子密度の高い液胞から低い液胞まで数種類あることがわかった(投稿中)。次に、これら突然変異株に液胞の膜蛋白質(ALP,Dap2)と、液胞の可溶性蛋白質(CPY,Proteinase A)の抗体を用いて、これら蛋白質の局在を調べた。膜蛋白質については、小胞に局在を示すことが多かった。細分化した液胞よりも、小胞に抗体が多く付いたことは、液胞膜が線としてはっきりと見える時は、膜に対して直角に切れた切片であり、抗原性を示す部分の露出は少なく、小胞の方が膜を水平に切る割合が多いことも原因の一つと考えられる。可溶性蛋白質については、液胞内、細胞質、medium中にも観察され、突然変異株では局在に異常がある可能性を示した。今後は、膜蛋白質については、Freeze Fractureなどの方法によって、膜を線ではなく、面で見ることが出来る方法などを工夫して観察する必要がある。 一方、分裂酵母については、蛍光顕微鏡の結果から、核のSPBとはわずかに異なる位置を示していたので、電子顕微鏡観察ではSPBの近傍を詳細に調べた。その結果、核の中に電子密度の高い領域が確認された。しかし、この領域とmei2^+遺伝子との関係を調べるために免疫電顕を行うには、細胞当りのこの部分の割合が大変少ない上に、この状態を示す細胞も大変少ない。この状態で停止するような突然変異株を使って、免疫電顕を進めたいと考えている。
|