酵母細胞における各種蛋白質の局在に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08660097
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 平田 愛子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (30092307)
• キーワード: 出芽酵母 / 異種蛋白質 / 免疫電顕 / 微細構造 / 分泌 / 小胞体 / 膜蛋白質

研究概要

出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のGDP-mannose transporterとして機能するVig4の細胞内局在について検討した。VIG4遺伝子の破壊株は致死的である。アミノ酸配列の特徴から、本蛋白質は複数回膜貫通型の膜蛋白質と予想され、C末端をmycで標識して解析した。その結果、ゴルジ体膜上に局在することが明らかになった。また、Vig4蛋白質を高発現させると、細胞内に小胞体由来と考えられる膜構造が多く蓄積した。Vig4蛋白質はこの膜構造体にも局在した。
昨年、Δpro(糸状菌(Rhizopus niveus)の菌体外酵素Aspartic proteinase-I(RNAP-I)のプレプロ配列からプロ配列を欠失した改変体)が出芽酵母の小胞体と考えられるオルガネラに顕著に蓄積したと報告した。今年は更に、小胞体シャペロン誘導に必須であるIRE1遺伝子の破壊株を作成して、IRE1破壊株中でのΔproの細胞内局在を調べた。その結果、Δproは野生株と同様、小胞体と考えられるオルガネラに蓄積すると共に、小胞体内腔に進入出来なかったΔproが細胞質に黒い塊(electron-dense granule)として蓄積していた。核内にも同様の蓄積が観察された。細胞質や核に存在するelectron-dense granuleは小胞体内に存在するΔproよりも電子密度が高くもっと黒く観察された(投稿準備中)。更に、野生株にΔproを発現させた後、Δproの生産を止めて、このΔproが消失して行く過程を調べた。Δproを蓄積した小胞体を液胞が取り込むような像は観察されなかった。免疫電顕で調べた結果でも、液胞内にはΔproは存在しなかった。細胞分画による生化学的解析結果からも、Δproは小胞体から他のオルガネラに移行しているというデーターは得られず、小胞体内で消失していると考えられる。
分泌過程では、蛋白質は小胞体からゴルジ体へ運ばれるが、その逆行に関与すると考えられた遺伝子RER2の解析を行った。HA-tagをつけて免疫電顕を行ったが、局在をはっきり示す像はえられなかったが、形態に関しては興味ある結果が得られた(Mol.Cell.Biol.19:471-483(1999))。

研究成果

• [文献書誌] Eiko Morita: "Presence of the CO_2-concentrating mechanism in some species of the pyrenoid-less free-living algal genus Chloromonas (Volvocales,Chlorophyis)" Planta,. 204・2. 269-276 (1998)
• [文献書誌] Teruo Kuroda: "Patch clamp studies on ion pumps of the cytoplasmic membrane of Escherichia coli:Formation,preparation,and utilization of giant vacuole-like structures consisting of everted cytoplasmic membrane" J.Biol.Chem.273・27. 16897-16904 (1998)
• [文献書誌] Yoshihito Uchino: "Reclassification of marine Agrobacterium species:Proposals of Stoppia stellulata gen.nov.,comb,nov.,Stoppia aggregata sp.nov.,nom.rev.,Ruegeria atlorrica gen.nov.,comb.nov.,Ruegeria gelatinovora comb.nov.,Ruegeria algicola comb.nov.,and Ahrensia kieliense gen.nov.,sp.nov.,nom.rev." J.Gen.Appl.Microbiol.44・3. 201-210 (1998)
• [文献書誌] Muyuki Sato: "The yeast RER2 gene,identified by endoplasmic reticulum protein localization mutations,encodes cis-prenyltransferase,a key enzyme in dolichol synthesis" Mol.Cell.Biol.19・1. 471-483 (1999)
• [文献書誌] Tsuyoshi Takewaka: "Null mutation in IRE1 gene inhibits overproduction of microsomal cytochrome P450Alkl (CYP52A3) and proliferation of the endoplasmic reticulum in Saccharomyees cerevisiae" J.Biochem.(in press). (1999)