本研究は、原核生物に見いだされたタイプIII様ドメインの構造と機能を解明することを目的として行ったものである。その目的を達成するために、(1)タイプIII様ドメインを欠失した変異キチナーゼA1を用い、タイプIII様ドメイン欠失の影響を分析する、(2)もともとタイプIII様ドメインをもたないキチナーゼにタイプIII様ドメインを挿入し、その影響を分析する、(3)大腸菌を用いてタイプIII様ドメインを大量発現し、立体構造を解析して構造と機能について分析する、という方針で研究を行い以下のような重要な成果を得ることが出来た。 (1)PCR法になどにより、Bacillus circulans WL-12のキチナーゼA1遺伝子からタイプIII様ドメインを欠失した変異キチナーゼ遺伝子を構築し、その遺伝子産物の性質を分析した。その結果変異キチナーゼは不溶性基質の分解活性が低下していることが明らかとなった。 (2)B.circlans WL-12のキチナーゼDの、タイプIII様ドメインの部分をコードするDNA領域をPCR増幅し、これをS.marcescens QMB1466のキチナーゼA遺伝子の、活性ドメインとキチン吸着ドメインの間のヒンジ領域に挿入した。この変異キチナーゼは大腸菌での分泌が異常となり初期の目的を達成することは出来なかったが、ヒンジ領域に機能について重要な情報を得ることが出来た。 (3)大腸菌を用いてタイプIII様ドメイン単独の大量発現系の構築を試み、これに成功した。現在精製系の検討を行っており、ごく近い将来結晶化を試みることが出来る段階にある。
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