RECKは、活性化ras遺伝子で形質転換したマウス線維芽細胞に対して正常復帰誘導活性を有する遺伝子として、最近、単離同定されたガン抑制遺伝子である。悪性形質転換したガン細胞では、その発現が抑制されており、RECK cDNAを強制的に発現させると、軟寒天中でのコロニー形成や腫瘍転移活性が抑制される。分子内にKazalドメイン(セリンプロテアーゼインヒビター様領域)をもつ。本研究では、RECK遺伝子産物の性状を解析するため、抗体作製、分子量推定、細胞内局在性、構造モチーフの機能解析を行った。 研究の結果の概要は以下の通りである。 (1)RECK cDNAの一部を大腸菌で発現させ、組み換体タンパク質を調製し、精製後、マウスに免疫した。ELISA法によってハイブリドーマを選択し、モノクローナル抗体を取得した。(2)バキュロウイルス発現ベクターを用いた培養昆虫細胞でRECKを発現させ、取得したモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングを行うと、分子量は約10万と算出され、アミノ酸配列から推定される値によく一致した。糖鎖含量は少ないと思われる。(3)RECKはN末にシグナルペプチドをもち細胞膜外に輸送されるが、C末にも疎水性アミノ酸領域が存在し、膜上に存在する。C末の疎水領域を除去すると培養液中にも検出され、分泌された。また、この疎水性領域をヒスチジン6-merのタグと置換させ、アフィニティクロマトグラフィー法による分泌型RECKの精製方法を確立した。(4)Kazalドメインの反応部位(P1部位)に相当するアミノ酸残基はAspであり、caspase様酵素を阻害する可能性が考えられ、caspase-1に対する阻害効果およびgranzymeBとの相互作用を調べたが、いずれも結果は陰性であった。
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