レニンは非常に特異性の高いアスパルティックプロテアーゼで、主に腎臓において生合成され、様々な刺激で血中に放出され血圧調節を行っている。一方、レニン結合タンパク質(RnBP)はレニンの唯一の内在性阻害物質であり、RnBPはレニンと結合し高分子型レニンを形成することによりレニン活性を強く阻害する。今回、ブタ及びヒトRnBPの大腸菌での発現ベクターを構築するとともに、発現RnBPの精製法を確立した。両RnBPの発現ベクターとしては、我々が開発したtacプロモーターと多コピーのpUC oriを持つpUK223-3を用いた。構築したブタ及びヒトRnBPの発現プラスミドを大腸菌JM109細胞にトランスフォームし、その発現を確認するとともに大腸菌菌体より、超音波破砕、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過やMono Q FPLCなどによりRnBPを精製した。組換え型ブタRnBPの場合には、湿重量32gの菌体より約5mgの精製標品を、また、組換え型ヒトRnBPの場合には、湿重量28gの菌体より約1.3mgの精製標品を取得した。さらに、組換え型ヒトRnBPの抗体を作成し、アビジン-ビオチン系を用いたサンドイッチ法による酵素免疫測定法を確立した。本法の測定感度は、2ng RnBP/wellであり、ヒト各臓器でのRnBPの定量が可能と考えられた。一方、ラットRnBP体細胞遺伝子を単離し、その構造を明らかとした。ラットRnBP遺伝子の全長は約9kbで、11個のエクソンで構成されていた。既に我々により構造が示されているヒトRnBP遺伝子との比較より、翻訳領域のエクソンは両遺伝子で同じ長さを持つことが明らかとなった。したっがて、RnBP遺伝子は種を超えてその構造が保存されていることが示唆された。
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