研究概要 |
リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼは,グリセロール骨格のsn-2位への脂肪酸導入を触媒し,トリグリセリドの分子内脂肪酸分布を決定している。本研究は,油糧植物種子におけるトリグリセリド合成系酵素遺伝子の構造と発現調節機構を解明することを目的として,わが国唯一の油糧作物であるイネ種子からリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼcDNAを単離し,その塩基配列を明らかにしようとしたものである。 油脂合成の盛んな登熟期イネ種子から,油脂集積細胞であるアリューロン層を単離し,アリューロン細胞に特異なcDNAライブラリーを作成した。一方,他の植物のアシルトランスフェラーゼcDNAのタンパク質コード領域の塩基配列を参考にして,PCRプライマーを作成した。アリューロン細胞cDNAライブラリーをテンプレートとしたPCRによって,500bpのDNA断片が得られた。この断片の塩基配列を調べたところ,トウモロコシ酵素cDNAの塩基配列と高い類似性を示した。次に,この500bp断片をプローブにして,cDNAライブラリーをスクリーニングした。得られたポジティブなクローンの1つは,1000bpの断片を含んでおり,サザンハイブリダイゼーションの結果からアシルトランスフェラーゼの塩基配列を持っていることが明らかとなった。この1000bp断片をシークエンスし,これが3'非翻訳領域を含む256アミノ酸残基からなるポリペプチドをコードしていることがわかった。そして,このイネ種子リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼには,カルボキシル末端付近に2ヶ所の強い疎水性領域が存在し,少なくとも2回膜を貫通していることが示唆された。
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