ピログルタミン酸(pGlu)とはGluのγカルボキシル基とαアミノ基とが分子内脱水縮合した環状アミノ酸であり、Gluと異なり無味である。さて、醤油や味噌の醸造中に、呈味性のGluが非酵素的な環化反応により、多量のpGluが蓄積することが知られている。申請者らはこれまで知られていない開環酵素(pGlu→Glu)を微生物に探索し、Alcaligenes faecalis N-38A株の分離に成功した。本年度は反応速度論的解析、一次構造の解明等を重点に進め、以下に示すような成果を得た。その酵素反応を速度論的に解析した結果、本酵素はATP、Mg++およびK^+を要求しないタイプの酵素であり、5-Oxoprolinase(without ATP-hydrolyzing)と命名すべき酵素であることを明らかにした。また、本酵素の反応は可逆的であり、Keq[Glu/pGlu]=0.035という平衡常数を持ち平衡が閉環に偏った酵素であることなどを明らかにした。酵素の一次構造の解明を目的に、酵素遺伝子のクローニングを試みた。酵素の遺伝子バンクを作成し、その中から発現系でのスクリーニングを行った結果、遺伝子バンク9600株より2株に酵素の発現が認められた。その制限酵素マップをもとにデレーションを行い、元株より40倍の生産を示すクローンpB8-2kを得ることに成功した。本酵素のアミノ酸分析より求めた残基数とpB8-2k構造遺伝子のアミノ酸残基数を比べると39残基足らないことより、酵素活性に寄与しないアミノ酸配列が欠落していると考えられ、次年度においてはこの塩基配列の解析等を行いたい。
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