研究概要 |
ツクシウロコゴケ培養細胞は、種々のクレロダン型ジテルペン酸及びγ-ラクトンを生成するが、最主要成分であるheteroscyphic acid A(HAA)に酢酸(2-^<13>C-)とMVA(2-^<13>C-及び4,5-^<13>C_2-)を取り込ませたところ、それぞれ、HAAは1.36と0.9atom% excessで^<13>C標識された。興味深いことに、HAAのFPP由来の部位のみが標識され、末端のIPP部位は標識されなかった。この結果は、維管束植物の茎葉部での、MVAのモノテルペンやセスキテルペンへのIPP部位への選択的取り込みと対照的であり、全く新しい標識パターンであった。同様の非等価な標識が、葉緑体のチラコイド膜で合成されるカロチノイドやクロロフィルaのフィチル側鎖にも認められるかどうかを確認し、葉緑体内でのGGPP代謝の制御機構を証明することを目的として本実験を行った。 方法-ツクシウロコゴケ及びトサカゴケ培養栽培に^2Hあるいは^<13>C標識した酢酸、メバロン酸、グリシンを投与した。生成したクロロフィルがカロチノイドを単離し、^2H及び^<13>C NMRを測定した。 結果-ツクシウロコゴケ及びトサカゴケ培養細胞中のクロロフィルaのフィチル部分の生合成(10atom% excess)やカロチノイド生合成においても観察された。以上から、葉緑体内でのGGPP代謝系から派生する化合物は、全て、HAAと同じ標識パターンを持つと推定される。この標識パターンは、葉緑体内に取り込まれたFPPと葉緑体内で合成されたIPPからGGPPの一部が合成される、あるいは、維管束植物とは異なり、コケ葉緑体はメバロン酸を効率良く取り組み、取り込まれたMVAからFPPが迅速に合成されると解釈すれば合理的に説明できる。
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