研究概要 |
イネのファイトアレキシンとして単離され、天然物としては稀なステマラン骨格を有するジテルペン系化合物であるオリザレキシンSおよびオリザレキシンSに類似のAB環構造を持ち、ニシキギ科植物から単離されたインターロイキン-1産生遊離阻害活性ジテルペンであるトリプトキノンGの全合成研究を行った。共通の出発原料としてWieland-Mischer ketoneを選び、9位ケトンのエチレンアセタール化、リチウム-液安およびクロロギ酸エチル処理による4位の還元的エトキシカルボニル化を行った。このエトキシカルボニル化ではエーテルを混合溶媒とすることにより、収率を93%にまで高めることができた。次に3位ケトンをエノールトリフレートに変換後、TfO基を還元的に除去し、生じた3,4-位二重結合のアリル位(2位)をコリンズ酸化することによりケトンを得た。この際、モレキュラーシ-ブス4Aを共存させることにより、収率が86%に改善された。次に、二重結合の接触還元、2位ケトンのアセタール化、LDA-MeIによる立体選択的(100%選択性)メチル基の導入により、両目的化合物に共通なAB環骨格を得た。さらに、2位アセタールの選択的脱保護、リチウム-液安による2位ケトンと4位エステル基の還元、希塩酸による9位アセタールの脱保護により、オリザレキシンSの完全なAB環構造の構築に成功した。また、共通AB環構造からt-BuOKによるエステル基のカルボン酸への変換、2位アセタールの脱保護、リチウム-液安還元、希塩酸による9位アセタールの脱保護により、トリプトキノンGのAB環構造を得た。さらに、モデル化合物を用いて、ロビンソン環化を経由することによりオリザレキシンSのC環部を、またダブルマイケル反応を経由してトリプトキノンGの完全なC環部を形成することに成功した。
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