本研究は、オリゴ2糖を出発基材としてグリコシダーゼの転移・水解反応を利用して複合糖質の分子認識シグナルに関わるとされる重要オリゴ3-4糖の実践的オリゴ糖鎖構築法を開発し、糖鎖ライブラリーの作製を行うことを目的としている。 1.ムチン型オリゴ糖鎖I型のミミック単位であるGalβ1-3GalNAcα-pNPからNocardia orientalis由来β-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(β-NAHase)の糖鎖延長反応を活用しムチンII型構造を有する型Galβ1-3[GlcNAcβ1-6]GalNAcα-pNP単位の位置選択的酵素合成法を確立した。 2.上記成果によるN.orientalis由来β-NAHaseのG1cNAc転移反応を応用し、N-アセチルラクトサミン(LacNAc)受容体基質に適用したところ、GlcNAcβ1-3 Galβ1-4GlcNAc3糖単位の合成も可能であった。この場合、受容体とシクロデキストリンとを包接複合体と成し反応を行うとGlcNAc転移の位置選択性の操作が可能で、目的化合物の収率の向上をもたらした。 3.Alcaligenes sp.由来α-L-フコシダーゼを触媒素子としてp-ニトロフェニルα-L-フコピラノシドからラクトースやLacNAc受容体のOH-3'位にに高位置選択的にフコシル転移した3'-0-フコシル・ラクトース(Fucα1-2Galβ1-4GLc)および3'-0-フコシル・ラクトサミン(Fucα1-2Galβ1-4GlcNAc)が高収率で得られる実践的酵素合成法を確立した。
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