研究概要 |
生産性向上を目指した活発な育種によって多種多様な品種が存在するため、野菜の機能性やその成分含量・組成に品種間差があることが推測される。本研究では、一年を通して生産・消費され、植物工場栽培品目としても実用化されているレタスとホウレンソウを題材として、機能性に関わる品種特性、栽培環境条件の影響等を検討した。機能性が認められているクロロゲン酸関連化合物(クロロゲン酸、カフエ酸、チコリ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸)の水耕レタス(玉レタス,リ-フレタス,立レタス,茎レタス、エンダイブ)では、全供試品種の含有成分に質的な相違は検出されなかったが、品種間に成分の量的変異の存在を認めた。また、養液濃度の調製でキナ酸基含有成分(クロロゲン酸、3,5-ジカフエオイルキナ酸)の含量が大きく変化し、成分組成比が変動することを明らかにした。また、レタス類の抗酸化活性に品種間差の存在を明らかにし、さらに品種が異なると抗酸化活性に寄与する主成分が異なり、その含量も変動する可能性を示唆した。また、ホウレンソウ7品種の葉身部エキスの抗酸化活性においても、品種によって有意に変動することを明らかにした。 さらに、同一条件で水耕栽培したレタス類5品種由来のエキス6,000倍濃度(プロモーター濃度比)で抗発ガンプロモーター活性を検定したところ、有意な品極間差が存在した。6,000倍濃度における生細胞率は全ての試料で約50%を示し、抗発ガンプロモーター活性がほとんど検出されなかった品種にも他の品種と同様な細胞毒性が認められ、細胞毒性に関与する成分は、抗発カンプロモーター活性成分と異なると判断された。 以上の結果は,種々に育種され多様な品種を有する野菜の機能性や機能性成分が、品種や栽培環境によって変動する可能性を示す興味ある知見であり,今後の育種や栽培条件の改善に寄与する基礎的知見であると考える。
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