研究概要 |
従来の野菜の育種は、耐病性、耐寒性、対暑性、抽だい性などの栽培の容易さや食味の改善などの点で長足の進歩を成し遂げ、量的な供給を計る上では十分の成果を上げてきた。本研究では、微量で生理活性を示す植物二次成分の重要性を認識し、将来の野菜が持つべき資質(機能)を明らかにしようとした。季節を問わず食卓を賑わすレタスでは、抗酸化性や血糖値低下作用などの作用が知られるクロロゲン酸関連化合物(クロロゲン酸、チコリ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、カフェ酸)が主成分であり、それらの含量や組成が品種(6品種)間および栽培条件で著しく変動することを明らかにした。抗発癌プロモーター活性の品種間差を比較したところ、有意の活性の低い品種の存在が判明した。また、その主成分としてリノール酸とリノレイン酸に抗発癌作用物質があることを明らかにした。また、抗酸化活性にも有意な品種間差が存在し、クロロゲン酸関連化合物の含量と相関を示す品種(リ-フ系レタス)とクロロフィル含量と高い相関を示すレタス類(立レタス、茎レタス、エンダイブ)に大別されることが認められ、品種間に有意な差のあることが判明した。一方、常食の黄緑色野菜であるホウレンソウにおいても抗酸化活性に有意な品種間差が認められ、その抗発癌プロモーター活性を探索したところ、2種の不飽和脂肪酸(C16:3とC18:2)が結合した結合したガラクトセレブロシドあるいはグルコセレブロシドに強い活性のあることを明らかにした。活性成分の含量を薄層クロマトで比較した結果、品種間で有意な含量差のあること明らかにした。 これらの結果は、機能性成分を指標とする成分育種によって、さらに健康維持・増進に貢献できる野菜の育成が可能であることを示した。
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