研究課題
花色素アントシアニンはin vitroでpHの変化により連続的に色が変わる。多彩でかつ、微妙な花色発現の原因の一つが、細胞内で色素の存在する液胞pHの違いであろうと推定できる。本研究では、細胞内微少電極法による生きた花弁液胞pHの直接測定法を開発確立し、花色と液胞pHの相関を定量的に明らかにすることを目的に行った。1.細胞内微少pH電極の作成高等植物用の細胞内微少pH電極を作成して、その先端形状をSEMで観察し、同時に応答を比較し、花弁用の電極の最適化を行った。約30%の割合で良応答性電極を作成できることがわかった。2.空色西洋アサガオの花弁液胞膜の単離とプロトン輸送活性の測定空色西洋アサガオ(Ipomoea tricolor)の花弁液胞pH(pHv)の細胞内微少pH電極による直接測定により、赤紫色の蕾のpHvは6.6で青色花弁のpHvは7.6であることがわかった。開花に伴う花色変化が液胞pHの特異な上昇によることが明らかになったので、この機構の解明を目的に、花弁から着色細胞のみをプロトプラスト化し、開花ステージ毎の色素細胞の液胞膜を調製した。膜上の2種類のプロトンポンプ、V-ATPaseとPPaseのプロトン輸送活性および水解活性を比較したところ、蕾と開花花弁のいずれも、V-ATPaseの方が活性が高いことがわかった。しかし、開花花弁でもプロトン輸送活性はツボミとはぼ同レベルで保たれていたことから、プロトンポンプの失活などによる液胞のアルカリ化機構ではなく、無機イオンの流入などによる機構が推定できた。
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