カルシウム不足による骨粗鬆症は、近い将来の老齢化社会における重大な社会問題となると予想される。食物センイのもつ健康維持のための多くの生理的機能を検索する一環として、本研究では、食物センイの発酵性と大腸でのカルシウム吸収促進効果の関係をさぐり、また外科的に大腸部を切除したラットを用いて、大腸部のカルシウム吸収への寄与を明らかにした。上部消化管でのカルシウム吸収障害を起こすため、胃酸分泌阻害剤オメプラゾールを投与し、カルシウム吸収を測定した結果、40%程度の著名なカルシウム吸収の低下が起こった。非吸収生のマーカーを使って各部位の吸収寄与を測ったところ、この吸収低下は小腸で起こっていた。さらに、食物センイの発酵性がカルシウム吸収に対してどのような影響があるかを明らかにするために、すでに吸収促進効果の明らかな水溶性で、発酵性の高いグアガム分解物を投与したところ、この吸収率の上昇は正常群と同等であり、小腸での大きな吸収率の低下を補償しなかった。このことは大腸が吸収率の低下を補償した腎不全時と明らかに異なっていた。この時の大腸内のカルシウムは充分に可溶化しており、食物繊維による大腸カルシウムの吸収亢進機構は発酵により産生された有機酸によるpHの低下とは異なることが示唆された。盲腸切除の結果、正常群と胃酸分泌阻害群とも、食物繊維によってわずかに上昇したカルシウム吸収は、完全に消失した。これらの結果は食物繊維によるカルシウム吸収の亢進に胃酸は重要な役割を持っていることを示している。
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