生体膜におけるビタミンE(α-Toc)のフリーラジカル捕捉反応機構の解明を目的に、平成8年度は生体膜モデルとしてホスファチジルコリン(PC)リポソーム過酸化反応におけるα-TocとPC由来のフリーラジカル種との反応を調べ、反応生成物としてα-Tocキノン、α-Tocキノンオキシド、8a-(PCペルオキシ)-α-トコフェロンを明らかにした。平成9年度は、8a-(PCペルオキシ)-α-トコフェロンの多量調製法の確立と、ラット肝臓ホモジェネートを用いて実際の生体組織の脂質過酸化反応の進行によるα-Toc酸化生成物を検討した。まず、標品としてのα-TocとPCペルオキシラジカル付加物の多量調製法を確立した。ダイズリポキシゲナーゼを用いて調製したPCヒドロペルオキシドとα-Tocを、メタノール中でキレート鉄を触媒として反応させたところ、高収率で付加物を得ることができた。その標品を用いて、ラット肝臓ホモジェネートからのα-Tocと酸化生成物の抽出法とHPLCによる分離条件を検討した。α-Tocはラット肝臓組織からヘキサン/2-プロパノール混液を用いると定量的に抽出でき、蛍光検出器によってHPLCで高感度定量ができた。一方、α-TocとPCペルオキシラジカル付加物は組織中での生成量がα-Tocに比べてわずかであると考えると直接測定することは困難であった。そこで、あらかじめ抽出物を酸処理し付加物をキノン体としてHPLC分析したところ、ある程度の感度で測定することが可能となった。本分析法を用いて、ラット肝臓ホモジェネートを過酸化反応させた時のα-Tocとその酸化生成物の変動を検討したが、α-Toc酸化生成物を定量的に捉えることはできなかった。
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