シイタケの血漿コレステロール低下作用とリン脂質代謝との関係について研究を行い、以下の結果を得た。 (1)シイタケに含まれるエリタデニンを食餌に添加して(2〜20mg/kg diet)ラットに投与すると、血漿コレステロール濃度は用量依存的に低下したが、同時に肝臓ミクロソームのPC/PE比や△6-不飽和化酵素活性も用量依存的に低下した。PC/PE比と△6-不飽和化酵素活性との間には有意な高い相関が見られた。また、血漿PCのアラキドン酸/リノール酸比も用量依存的に低下した。エリタデニンによるPC中のリノール酸の増加はかなり特異的に16:0-18:2分子種の増加に反映していた。 (2)脂質代謝に及ぼすエリタデニンの効果の経時的変化を追跡し、肝臓ミクロソームのPC/PE比や△6-不飽和化酵素活性の低下ならびにリン脂質の脂肪酸組成や分子種組成の変化は血漿コレステロール濃度の低下にやや先行していることが分かった。 (3)血漿の各リポタンパク質の脂質濃度やPCの分子種組成に及ぼすエリタデニンの影響を、コレステロール無添加食およびコレステロール添加食を用いて検討した。エリタデニンによる血漿コレステロール濃度の低下や血漿PC分子種の変化は外因性コレステロールの有無に関わらず見られること、また、超遠心法で分離したVLDL、LDLおよびHDLの間でPC分子種組成に大きな違いは見られないことなどが分かった。 以上の結果から、シイタケのコレステロール低下作用因子であるエリタデニンは肝臓ミクロソームのPC/PE比を低下させ、これが△6-不飽和化酵素活性の低下をもたらし、ひいては血漿リポタンパク質の主要なリン脂質であるPCの分子種組成を大きく変化させるものと考えられた。エリタデニンによる血漿リポタンパク質リン脂質分子種組成の変化がエリタデニンの血漿コレステロール低下作用に深く関わる可能性について考察した。
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