食品素材に含まれる肝解毒酵素誘導因子の探索研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08660153
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 内田 浩二 名古屋大学, 農学部, 助教授 (40203533)
• 研究分担者: 大澤 俊彦 名古屋大学, 農学部, 教授 (00115536)
• キーワード: 食品素材 / 肝解毒酵素 / グルタチオンS-トランスフェラーゼ / ラット肝細胞 / フェノール性抗酸剤 / t-ブチルヒドロキノン / BHA / 酸化ストレス

研究概要

初年度は細胞株としてラット肝細胞RL-34を用い、細胞内解毒酵素であるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)誘導アッセイ系の確立を行った。フェノール性抗酸化物質としてブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびその代謝物であるt-ブチルヒドロキノン(t-BHQ)を用い、分光高度計を用いた比色法による迅速な細胞内GST活性の測定を可能にした。このアッセイ系を使いこれまでに70種以上の脂溶性低分子化合物について誘導活性のスクリーニングを行った結果、陽性化合物として過酸化水素あるいはイソチオシアナ-ト類などが見出された。構造活性相関はみられなかったものの、酵素基質になるような化合物、例えばα,β-不飽和化合物などに顕著な誘導活性がみられた。最も誘導活性の強かったt-BHQについてさらに免疫ブロットによるタンパク質レベルおよびノーザンブロットによる遺伝子発現レベルでの解析を進めたところ、t-BHQによるGST誘導はタンパク質および遺伝子発現レベルにおいていずれも顕著であり、さらにそのアイソザイムの一つであるClass π GST (GST-P)に特異的であることが判明した。今後はこうした基礎的解析データを基に、食品素材を中心としたスクリーニングを行い、新規誘導因子の探索を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] A.Fukuda: "Oxidative stress response in iron-induced acute nephrotoxicity" Biochem.Biophys.Res.Commun.219. 76-81 (1996)
• [文献書誌] A.Yoritaka: "Immunohistochemical detection of 4-gydroxynonenal protein adducts" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 93. 2696-2701 (1996)
• [文献書誌] A.Fukuda: "Oxidative stress response in iron-induced renal carcinogenesis." Arch.Biochem.Biophys.329. 39-46 (1996)
• [文献書誌] A.Fukuda: "4-Hydroxy-2-nonenal cytotoxicity in renal proximal tubular cells" Arch.Biochem.Biophys.333. 419-426 (1996)
• [文献書誌] Y.Hattori: "Formation of 8-hydroxy-2-deoxyguanosive in epidermal cells of hair less mice after chronic UV exposure" J.Invest.Dermatol.107. 733-737 (1996)
• [文献書誌] T.Umemura: "Prevention by 2-mercaptoethane sultonate and N-acetyl-cysteine of renal oxidative damage in rats" Jpn.J.Cancer Res.87. 882-886 (1996)
• [文献書誌] 内田浩二: "活性酵素と医食同源" 共立出版社, 356 (1996)
• [文献書誌] 内田浩二: "細胞工学" 秀潤社, 200 (1996)