研究概要 |
本年度はGST誘導における情報伝達機構の解析を中心に調べた。GST遺伝子についてはかなり詳細に研究が行われてきており、rGSTP-1遺伝子のクローニング、および発現調節領域(シス配列)およびトランス因子についても多くの報告がなされてきている。それをまとめると、転写開始から-47〜-42にGCボックス、-27〜-23にTATAボックス、-61〜-54にTPA response element(TRE)、-396〜-140にサイレンサー、-2.2kbにエンハンサーとしてGPEI、-2.5kbにGPEIIの存在が明らかにされている。GPEIの中にもTRE配列があり、TRE配列への転写因子AP-1の、GCボックスへのSp1の結合が考えられている。これらの転写制御配列に結合する転写因子は、酸化ストレスによりその活性が制御されることが示唆されており、t-BHQによる何らかのシグナルがGST-P遺伝子の転写調節に関与することが予想された。そこで、これらの転写因子のDNAオリゴヌクレオチドに対する結合活性の変化についてゲルシフトアッセイによる検討を行った。t-BHQを投与した細胞の核抽出液とAP-1、Sp1,NF-κBおよびNF-1の結合配列を用いてゲルシフトアッセイを行った。その結果、上記いづれの転写因子おいても、そのDNA結合活性に若干の増減が観察されたものの、AP-1などの転写因子産物の発現はほとんど観察されなかったことから(data not shown)、これらのレドックス感受性転写因子がGSTの遺伝子発現調節に関与している可能性は低いものと考えられた。
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