著者が世界に先駆けて発見した小胞体内腔に局在するシステインプロテアーゼ、ER-60プロテアーゼの構造機能相関を分子レベルで明らかにする目的で研究を行い、平成8年度は以下の研究実績を挙げた。 1.動物細胞発現用のベクターに、ラットおよびヒトER-60プロテアーゼ遺伝子を、センスあるいはアンチセンスに挿入した発現プラスミドを作製した。これらのプラスミドをCos-1にトランスフェクションし一過性の大量発現に成功した。さらに、スクリーニング用の抗生物質存在下で形質転換細胞を単離し、種特異的な抗ラットER-60プロテアーゼ抗血清を用いてER-60プロテアーゼ発現量を測定し、恒常的にER-60プロテアーゼを高いレベルで発現している細胞を取得した。アンチセンス遺伝子の導入細胞については、形質転換細胞を単離し解析中である。 2.cDNAを用いて大腸菌で活性型のリコンビナントヒトER-60プロテアーゼタンパク質の発現に成功し、その精製法を確立した。 3.PCR法により 部位特異的変異を導入したリコンビナイト遺伝子を作製し解析した。そのうち、ER-60プロテアーゼのトライア-ドを構成すると考えられるアミノ酸残基のうちシステイン残基に変異を導入したリコンナントタンパク質の解析から、CGHCモティーフ内の後ろ側のシステインが活性基システインであることが明らかとなった。
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