ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリル(AITC)等の抗菌物質にシクロデキストリン(CD)を加えて包接粉末を作成し、この包接粉末を種々の温度・湿度環境下に静置した場合の包接物質の徐放特性を速度論的に検討し、以下の結果を得た。 1.湿式混練法による包接粉末の作成と包接機構 α-、β-、γ-CDとヒノキチオールおよびAITCを混練し、真空乾燥して包接粉末を作成した。β-およびγ-CDとヒノキチオールは、ほぼ1体1の複合体を形成したが、α-CDとヒノキチオールは包接複合体を形成しなかった。AITCはすべてのCDと包接複合体を形成したが、包接率(ゲスト物質とCDのモル比)は0.6〜1.0であった。 2.恒温・恒湿条件下での徐放特性 ヒノキチオールおよびAITCを包接した粉末を、ガラス製平底瓶に入れて直列に連結し、調湿した空気を流して、恒温・恒湿状態で徐放実験を行った。所定時間毎に粉末中のゲスト物質残存量から徐放量を測定した。ゲスト物質残存量は時間に対して下に凸の曲線を描いて減少し、徐放条件(温度、湿度)に固有な残存量に漸近した。関係湿度が0の場合には、いずれのゲスト物質もほとんど徐放せず、50℃、300時間後の徐放量は初期値の10〜20%であった。湿度の増加と共に初期徐放速度が増加し、同一温度・湿度における徐放速度はヒノキチオール、AITCの順に増加した。漸近残存量を基準とした徐放速度は、残存量に関する一次反応式として近似できることがわかった。
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