シクロデキストリン(CD)に包接されたリモネン等の香気物質や、イソチオシアン酸アリル(AITC)等の抗菌物質の徐放特性を種々の温度・湿度環境下で測定し、徐放特性を速度論的に検討した。 1.恒温・恒湿条件下での徐放特性 リモネン、メントールまたはAITCを包接したCD粉末を、ガラス製平底瓶に入れて直列に連結し、調湿した空気を流して、恒温・恒湿状態で徐放実験を行った。ゲスト物質残存量は時間に対して下に凸の曲線を描いて減少し、徐放条件(温度、湿度)に固有な残存量(平衡残存量)に漸近した。平衡残存量は関係湿度の増加によって著しく減少した。初期徐放速度はゲスト物質の包接量に関して1次徐放速度式で良く相関された。徐放速度定数がア-レニウス式に従うと仮定して徐放活性化エネルギーを算出した。活性化エネルギーは関係湿度が50%以下では関係湿度の増加につれて著しく減少し、50%以上では30〜40kJ/molとほぼ一定であった。 定速昇温実験法による湿潤条件下での徐放特性 定速昇温実験法は試料温度を時間に正比例して上昇させる実験法である。包接粉末充填層に調湿した窒素ガスが通じ、試料温度を2〜8K/hに昇温し、窒素ガス中のゲスト物質の濃度変化を測定した。徐放速度がゲスト物質包接量の1次に比例すると仮定し、定速徐放速度式を解析して、窒素中のゲスト物質濃度が最大になる試料温度から、徐放活性化エネルギーを算出する式を定式化した。この方法による徐放活性化エネルギーは、恒温・恒湿条件での測定値とほぼ一致した。本測定法は、簡便・迅速に徐放速度パラメーターを得る手法として極めて有用である。
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