本研究者はこれまでに蛋白質とタンパク質糖を化学的に結合させると蛋白質の耐熱性や乳化性などが著しく改変され、新規な食品機能を発現するようになることを報告してきた。本研究者は、この機能改変の分子機構を解明することを目的として、蛋白質工学的手法により、卵白リゾチームをモデルとして、酵母発現系で多糖化することに成功しているので、この系を用いて研究を行った。リゾチームcDNAを部位指定変異により活性中心から離れた分子表面(49位および19位)にN型糖鎖認識配列Asn-X-Thrを導入するように改変し、これを酵母発現ベクターに組込み、形質転換した酵母を用いて大量に培養し、培養液に分泌したグリコシル化リゾチームをカチオン交換樹脂(CM-トヨバ-ル)に吸着させ、分離精製を行った。こうして得られたリゾチームはマンノース残基が約300個付加した多糖化リゾチームであった。この多糖化リゾチームを用いて単-多糖類複合体の高機能化(食品機能として重要な高乳化能)の分子機構を調べあ。その結果、結合糖鎖長および糖鎖のタンパク質との結合数が機能に大きく影響することが明らかになた。また、多糖鎖を蛋白質から遊離させると機能が著しく低下することが示され、蛋白質と多糖の結合が機能発現に必須であることが確認された。これらの分子レベルでの情報は蛋白質-多糖複合体の分子設計に重要な情報を提供している。
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