研究概要 |
脂肪酸はトリアシルグリセロールとして脂肪組織に蓄積され、必要に応じて各組織に運搬されて、ミトコンドリアのβ酸化経路およびTCA回路でエネルギー代謝の基質として利用される。ところが、脂肪酸の一部はω酸化経路でも代謝される。脂肪酸ω酸化経路の最初の反応であるω水酸化反応を触媒する脂肪酸ω水酸化酵については、概に筆者らがウサギの肝・腎及び肺ミクロソームより精製し、そのcDNAクローニングにも成功している。 本研究では、この脂肪酸ω酸化の代謝経路を確立するために、ω水酸化反応に続くω位水酸基の脱水素反応を触媒する酵素系について検討した。ウサギの肝細胞質は、12-ヒドロキシラウリン酸およびエタノールに対して高い脱水素酵素活性を示した。両者の熱安定性を検討すると、エタノール脱水素酵素活性は熱に比較的安定であるのに対して、12-ヒドロキシラウリン酸脱水素酵素活性は著しく不安定であった。このことから、肝細胞質には少なくとも2種類のアルコール脱水素酵素が存在し、その一つはω-ヒドロキシ脂肪酸に特異的な酵素でると予想した。反応生成物はGC-MSにより1,12-Dodecane dioic acidと同定された。肝細胞質より同酵素を精製したところ、SDS-PAGEで51kDa.の単一バンドを示し、二量体で存在することが明らかになった。精製酵素の臭化シアン分解により得られたペプチド断片のアミノ酸配列を決定し、データーベースより検索した結果、ヒト肝のアルデヒドデヒドロゲナーゼと高いホモロジーを示した。同酵素をコードするcDNAの塩基配列をアミノ酸配列より推定し、合成オリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、RT-PCRを行い、約500bpのcDNAの断片をクローニングした。これをプローブに用いてウサギ肝cDNAライブラリーより本酵素の完全長cDNAをクローニング途上である。また、絶食下におけるこれらのω-酸化系酵素の動態についても検討を行った。
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