平成9年度は次のような調査を行った。 平成8年に、北大和歌山地方演習林8林班のスギ・ヒノキ造林地内に、50m×50mの規模で設定した皆伐区画において、以下の追跡調査を実施した。 1)区画内に設定した植生調査プロット5ヶ所(各2m×5m)で植生調査を行った。そのうちの2ヶ所には、侵入植生のシカ・カモシカによる食害を防ぐために、寒冷紗を用いて防護柵を作成した。 2)1993年に同演習林スギ・ヒノキ造林地内に設置した5ヶ所の小面積皆伐プロット(10m×20m)内の植生調査コードラートにおいて侵入植生の調査と、野性動物による被食実態の調査を行った。 その結果、次のことが判明した。 まず、皆伐跡地への侵入植生の種数については、皆伐直後と比較してほとんど横ばいもしくは減少傾向が見られた。これは新たな種の侵入が行われた一方、動物による食害や、急激な光環境の変化によって日焼け、乾燥などの影響を受けて枯死した種もあったためである。しかし、防護柵によって囲ったプロット内の植生回復はめざましく被度で約80%にまでなっていた。とくにカラスザンショウ、ムラサキシキブなどシカ・カモシカが好む種は、柵の外のプロットではほとんど見られなくなっていたのに対し、柵の内側では多数個体の侵入と旺盛な成長を見せていた。侵入個体数も囲いの外では減少していたのに対し、内側のプロットで増加していた。これらのことから、単純な一斉造林地内における小面積皆伐区画の配置により、これらの区画が野性動物の採食地として価値を持ち始めたものの、過度の被食により侵入した植生が定着できないでいることを示している。今後はこれら防護柵の内外における植生回復の違いを追跡し、採食地の保全のあり方を検討していく必要がある。
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