北大和歌山地方演習林に本研究開始当初から設定してある、スギ・ヒノキ造林地における小面積皆伐プロット内に更新してきた、木本稚樹および草本層に対するシカ・カモシカによる食害が著しくなってきた。そこで、97年末に上記の各プロット内へこれら動物の侵入を防ぐ意味で、プロットの半分を約1.5mの高さで、寒冷紗を使用して囲いを設置した。その後、冬期の食害多発期が過ぎた98年6月と、ほぼ植物の夏期の生長が終わったと考えられた10月下旬に、プロット内の植生調査を実施した。その結果、98年6月の調査では、5つの皆伐区画プロットの内、4つで侵入木本の個体数および種数の増加を見た。しかしー夏経過した98年11月では、前回個体数が増加した4つのプロットの内3つについては再び減少に転じた。一方、種数については変化は無かった。これに対し、囲いの外では、個体数、種数ともこれまで同様やや低いレベルで推移した。これらのことは、囲いによって冬期間の食害をまぬがれたため一時的に侵入個体数が増加したものの、夏期の日射による日焼け現象により死亡個体が増加したこと、また囲いによりシカ・カモシカの好む樹種が再び侵入してきたことが種数の増加につながったと考えられる。今後とも、食害高を脱するまで囲いを継続することにより、シカやカモシカが好む植生を回復させることが期待される。 一方、広葉樹林に隣接した林分に設定した皆伐プロットでは、大面積造林地内に設定したプロットより、種数、個体数とも著しく多くの植生の侵入が確認されたことから、近くに母樹があることの重要性が確認された。しかし食害は同様に著しかったことから、侵入樹木が一定の高さになるまでは何らかの食害防除処置が必要であると考えられた。 。
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