本研究は、北大和歌山地方演習林において実施した。調査はまず、当林に本補助金交付依然よりスギ・ヒノキ人工林に設定してあった、小面積皆伐区画(各0.02ha)5ヶ所の調査より開始した。各区画内に設けられた植生調査プロットにおける侵入植生の、根本直径、樹高および食害の度合いに関する調査を、1996年12月、1997年11月、1998年6月および11月に実施した。また1996年3月には、母樹になりうる天然林に隣接したスギ・ヒノキ人工林に、既存の皆伐区画より規模の大きな(0.25ha)の皆伐区画を設定し、区画内に5ケ所(最終的に6ケ所)の植生調査プロットを設置して、同様の時期に侵入植生の調査を行った.また1996年と、1998年には、皆伐区画がおよぼす間伐効果を調べるため、区画周辺木の胸高直径、樹高に関する調査を行った。その結果、間伐効果については、胸高直径成長幅が対照区より有意に大きく、皆伐による間伐効果が見られた。野生動物の食物となる広葉樹の侵入の実態に関しては、1998年の6月には5つのプロットのうち4つで、侵入木本の個体数および種数の増加をみた。しかし1998年11月にはこのうち3つについては減少に転じた。これは夏の日射による日焼け現象により死亡個体が増加したこと、またシカ・カモシカの好む種類が採食されたためと考えられる。一方、大きな皆伐区画においても同様な傾向が見られたので、1996年の秋に一部プロットをネットのより囲ったところ、それ以外のところにくらべて、大幅な木本類の侵入と成長をみた。このことにより、人工林内に群状に設けた小面積皆伐区は、周囲の間伐効果が期待できることに加え、広葉樹類の侵入がおきるため、野生動物の採食地としての機能は期待できるが、侵入当初から食害にあうため、食害高を脱するまでの期間、一時的な食害防除策をあわせてとる必要性があることが判明した。
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