研究概要 |
北海道大学雨龍地方演習林の針広混交林内に調査区を設定し,胸高以上の樹木個体のサイズと位置を精査し,次年度に予定している林内環境測定のための森林構造情報を得た.また,泥炭地と灰色台地に生育するアカエゾマツの幹直径の変動と土壌環境要因,気象要因,光合成活性,木部圧ポテンシャルとの関係を調査した.幹直径の変動は,両地点で任意に選んだ供試木にひずみ計を取り付け,1996年8月中旬〜10月下旬まで連続測定を行った.幹直径の日変動を見ると,灰色台地土では,土壌の乾燥に伴い9月中旬まで緩やかに増加し,その後ほぼ一定に推移した.泥炭地では,地下水位の上昇下降に伴い,幹直径は増加減少を繰り返した.ただし,両地点とも幹直径は,降水量に対して正の,日射量に対しての負の相関関係が見られた.灰色台地土では,気温に対して負の相関,泥炭地では湿度に対して正の相関が見られた.以上から,樹木の幹直径の変動は,蒸発散の影響を受けるものと思われた.そこで,日変動量と環境要因の関係を解析したところ,両地点とも日射量,気温に対し,より強い正の相関関係が見られた.この事と前述の事を合わせて考えると,幹直径の変動は,夜間の水分吸収と日中の蒸発散による水分損失に由来するものと考えられる.さらに,9月中旬における幹直径の時間変動と光合成活性,木部圧ポテンシャルの関係を解析した.光合成活性は,光と光合成速度の関係を曲線近似し,その初期勾配と飽和光合成速度を考慮した.泥炭地では,幹直径と木部圧ポテンシャルに高い正の相関が見られ,幹直径は,水分生理を直接反映していた.灰色台地土では,幹直径に水分生理は反映されなかったが,幹直径と光合成活性に,相関関係が見られた.今後,これらの時季別の解析によって,両者の違いを明確にする必要がある.
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